autour de 30 ans.

勉強したことを書きます

2拍子系のパスピエ

ドビュッシーの『ベルガマスク組曲』(1890–91/1905) の第4曲「パスピエ」Passepied は、19世紀以降にこの舞曲の名を冠した作品のなかでも最も知られているものと思います。 バロック期の組曲を下敷きにした『ベルガマスク組曲』を締めくくる、快速の4拍子の…

Parsifal ohne Worte - 2

quasifaust.hatenablog.com 『パルジファル』の管弦楽抜粋を組曲/ポプリに仕立てたものは、楽譜が出版されているものとそうでないもの、録音が販売されているものとそうでないもの、いろいろありますが、程度の差こそあれ基本的にはどれもワーグナーの原曲…

Parsifal ohne Worte - 1

ワーグナーの音楽劇からの抜粋*1というのはシンフォニー・オーケストラの大事なレパートリーになっているわけですが、どれだけの部位を切り出すのが可能か・どれだけ切り出すのが一般的かというのは作品によってわりと違いがあります。 その中で、最後の『パ…

Corno inglese di basso

という楽器を、メンデルスゾーンが「管楽合奏のための序曲」Ouvertüre für Harmoniemusik Op.24 や、その前身となる「ノクトゥルノ」Nocturnoで指定しています。 名前だけ見るとイングリッシュホルン(アルトオーボエ)の関連楽器かという気にもなりますが、…

『音楽の十字街に立つ』補遺:サン=サーンスとフランク

quasifaust.hatenablog.com 前の記事の注釈が膨らんでしまったので分割。 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online - 音楽の十字街に立つ 『音楽の十字街に立つ』の約三分の一を占める「ヴァンサン・ダンデイの觀念」は、ダンディの大部『…

サン=サーンス『音楽の十字街に立つ』

以前某所に書いたことの増補版。 戦前にも日本ではクラシック関係の音楽書の執筆・翻訳がかなりの数おこなわれていて、国会図書館のデジタルコレクションで読める本も多くあります。 国立国会図書館デジタルコレクション なにしろたいていが情報も翻訳も古い…

「アド・ノス」幻想曲について

コラール「アド・ノス、アド・サルタレム・ウンダム」による幻想曲とフーガ(Fantasie und Fuge über den Choral "Ad nos, ad salutarem undam", S.259)は、ピアノからのアプローチが圧倒的に多いリスト語りの中で、オルガン曲ということもあっていま一つ触…

「スケルツォとマーチ」について

リストの「スケルツォとマーチ」(Scherzo und Marsch, S.177)。1851年作曲開始、1854年出版というリスト壮年期の作品ですが、それにしてはマイナーで、ただしソナタに繋がっていく大作の一つとして評価すべきという声が近年高まっている、という感じでしょ…

ポロネーズ第1番(憂鬱なポロネーズ)について

リストのポロネーズ第1番ハ短調(S.223/1)。「憂鬱な」(mélancolique)という副題はリスト自身が付けたものですが、EMBのリスト全集以前は省かれることが多かったそうです。 ホ長調の第2番とのセットで発表された作品ですが、第2番はSP時代からかなりの録音…

バラード第2番について

リストのバラード第2番(S.171)。1853年、ソナタの直後に完成した作品で、ロ短調という調性や作品の雰囲気からソナタの弟分(演奏時間は約半分です)とみられることが多いようですが、作品の作り方はだいぶ違うように見えます。 ソナタは断片的な性格の動機…

「オーベルマンの谷」について

「巡礼の年」第一年の中核となる「オーベルマンの谷」(Vallée d'Obermann)。大曲群の中でダンテやソナタに演奏頻度は譲るかもしれませんが、代表作の一つとして十分に認められている曲でしょう。初稿の作曲はマリー・ダグー夫人との生活のさなかの1835-36…

超絶技巧練習曲のソナタ形式

超絶技巧練習曲(Études d'exécution transcendante, S.139)から、ソナタ形式で考えられる3曲の話をしようと思います*1。十分に有名な曲なので(それでも題名のせいで損な受け取られ方をしている気はしますが) 説明はいらないでしょう*2。すべての大本にな…

「ダンテを読んで」について

「巡礼の年」第2年*1の最後を飾るのが、「ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲」(Après une lecture du Dante: Fantasia quasi Sonata)*2。最初の稿がまだリスト20代の1839年、そこからひたすら改訂を重ねて現行の形に落ちついたのが1853-56年ごろで、出版は185…

「私はピアノのパガニーニになる」

私はピアノのパガニーニになる!そうでなければ狂いそうだ! - フランツ・リスト — クラシック名言bot (@wisesayingsbot) 2018年3月4日 という言葉の元ネタについて。 歴史に名を遺すヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、パガニーニは前半生では主にイタリアで…

「ジークフリート牧歌」の引用

ワーグナーの「ジークフリート牧歌」は、当時作曲が仕上げの段階に入っていた楽劇「ジークフリート」の最終場面(第三幕の最後十数分)と共通の素材を使って書かれた作品ですが、そこに含まれない素材として、提示部の終わりの方、91小節目でオーボエに可愛…

「演奏会用大独奏曲」について―3

前回に引き続き曲の流れを追っていきます。はじめに全体の形式を再掲しておきます。 第1部 Allegro energico - Grandioso1-29…主題A ホ短調30-45…主題B ホ短調46-60…主題C61-101…主題Aによる推移102-144…主題B' ト長調 第2部 Andante sostenuto 145-160…主題…

「演奏会用大独奏曲」について―2

おおまかな解説は前の記事 「演奏会用大独奏曲」について―1 - autour de 30 ans. に託して、ここでは曲の流れを見ていこうと思います。曲は親しみやすいですが、込み入ったつくりの曲には違いないので、まずは全体の構成を示してから順を追って腑分けしてい…

「演奏会用大独奏曲」について―1

フランツ・リストの「演奏会用大独奏曲」Grosses Konzertsolo、S.176。あまりにふんわりした題名のせいかかなり冷遇されているこの曲。PTNAにも解説がないぐらいですが、CDは知る限り5、6枚あって、じわじわ再評価中、というぐらいの感じでしょうか。2台ピア…